【豆移動】 ノルマ地獄 〈第9回〉 何の得にもならない努力に快感を覚える……。

【豆移動】
何かができるようになりたい。
これを達成すればいいことがある。
そんな風に前向きに色々な努力をする人って素敵だと思います。
でも、私の場合は少し違うみたいなのです。
自分にとって何の得にもならないことを努力し続けること。
これに快感を覚えてしまうのです。

小さい頃からの癖で、自分に無理やりなノルマを課してきました。
大人になった今でもそれは変わらず続いています。
もちろん年齢があがるにつれてできるようになることもあれば、逆にできないようになることもありますし、昔は思いつかなかったことも、日々の生活のなかでたくさん思いついていったりします。
なので、私はこれからも自分にノルマを課し続けることになるのでしょう。
そんな私が中学生くらいの頃、はまっていたノルマのお話をしたいと思います。それは豆移動です。
ヒントを得たのは中学校の運動会での障害物競走でした。
色々な障害物の中のひとつとして、豆を5個右のお皿から左のお皿へ箸で動かすというモノがありました。
私の学年が出る種目ではなかったので、運動会で体験したわけではないのですが、周囲との競争の中で焦りながら豆を落としてしまう生徒たちを見ながら、私はひそかに興奮してしまいました。
早速実践に入ろうと決意した私は、家の中で豆を探しました。
その頃祖母がよく作っていた小豆を、良し悪しで判断してよりわけていたので、その小豆を少しもらおうと思いました。
とはいっても、食べるわけでもない小豆をいきなり理由も無く「ちょうだい」と言うのも変なので、祖母が傷が入っていて捨てる方の小豆をコッソリ部屋に持ち帰りました。
障害物競走では豆は5つだけでしたが、自分の部屋でやる場合には、そんなもので済むはずがありません。
ましてや自分への無茶なノルマでなければ、自分自身が納得できないのです。
部屋へ持ち込んだ豆はかなり多く、軽く100個は超えていました。
キッチリした数字の方が好きですしわかりやすいと思ったので、私はまず豆を100個にすることにしました。
この時はまだノルマは始まっていなかったのですが、私はそこから箸を使うことにしました。
ボウルに入れてある小豆を箸で1つずつ広げたティッシュの上に乗せていきます。ボウルの中で転がる小豆は、思った以上に掴むのが難しく、これからの苦難を予想すると背中がゾクッとする感覚を覚えました。同時にあそこが熱くなる感じも……。
100個の小豆を用意し終わったところで、自分へ課すノルマのルールを設定します。
時間制限はなし。箸で1つずつ運ぶこと。運ぶのはベッドの上から、勉強机の上まで。
距離にして約2歩なのですが、これだけでは縛りが楽すぎると感じたので、ノルマ達成まではかかとを床につけてはいけないというルールを追加しました。
簡単に思われるかもしれないですが、ベッドの高さはかなり低めなので、少ししゃがまないと小豆を掴むことはできません。必然的に、爪先立ちでのスクワットのような状態で小豆をつまんで、2歩ほど歩いて机の上に置かないといけません。
スタートして4つ目の豆を取ろうとしたときには、もう後悔をし始めていました。
爪先立ちのスクワットがかなり脚に効いていて、プルプルと震え始めたからです。
脚が揺れればもちろん手先も揺れます。
不安定な状態で小さな小豆を箸でつまむのはかなり大変で、焦りから手にも汗をかいていました。
途中から要領を掴んで少しスピードはあがりましたが、それでも数が多く、運んでも運んでも終わりが来ないような気がしました。
時間と共に脚は悲鳴を上げ、腕もだんだんと疲れてきました。
気を抜くとすぐにでもかかとをつけてしまいそうでした。
もちろんかかとが床に一瞬でも着いた場合は、最初からやり直しです。
そんな事態になったら、一晩中やっていても終わらないだろうということがわかっていたので、意地でも爪先立ちを保とうとしていました。
緊張と疲労で嫌な汗が全身をつたいます。
なるべく体を動かさないようにと思うので、呼吸も止まりがちです。
結局最後までにかかった時間は1時間12分。
終わった瞬間の安堵感と脱力感はすごかったです。でも、またすぐに頭の中で別の私が言います。
「じゃあ、これを元に戻そうか」と。

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操・・・5歳の時にMに目覚め、隠れて自分を苛め続ける。高校2年のとき、インターネットで知り合った男性を通してSMを知り、それ以来SMの世界に浸かる。痛みや苦しみを与えられると身体が反応し、相手に命を預けることで愛を感じる。

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