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言い忘れたが、昨日書いたような(熟年の)抱擁は、ジャンル的に分類すると「野外露出」にあたる。
見せつけているのだ。それでいっそう欲情している可能性が、ないとはいえない。いえない以上「野外露出」と断言してもかまわないと思う(熟年カップルにそんな変態性欲が存在しないと、誰が断言できますかッてはなし)。
私のようなささやかな観客は、興奮を倍増させる、けっこうなアイテムというわけです。
そんなことをつらつらと考えていたら、そういえば以前、強烈な情景に出くわしたことを思い出した。
金曜日の夜十時ごろ。山手線、外回りのできごとである。
S駅から、あわてて飛び乗った車内は、むんむんするていどには混んでいた。押し込まれるように中に入っていくと、目の前で(もう本当に目の前三十センチくらいの距離で)カップルが熱烈に抱き合ってキスしていたのである。
野外露出もそこまで近距離になると、ちょっと困ってしまうようだ。
濃厚なディープキスで、激しく舌と舌を絡ませているのが、あまりにも生々しく、聴こえはしないのだが、ヌチュニュチュという唾液の交じり合う音までもが、響いてきそうないきおい。
男性は、ビシッとしたスーツを着込んだ五十歳くらいのナイスミドルなのである。女性は、二十代半ばで、同じようにスーツを着こなした、どうみても、美人なのである。会社の上司と部下……。不倫? こちらの粗末な想像力では、そんなことしか考えられないが、なんだか、とにかく、いやらしすぎる。
二人は、ドアの端に寄って、しっかりと抱き合い、いやらしくキスしていた。目の前にいる私は、後ろからおされれば、あわてて両手を前へ突き出し、しっかりと体を支える。外部を遮断して、ふたりの防護柵と化していた。ボディーガードみたいなものである(ふたりとも、夢中にキスしているので、そんなこちらの努力など、まったく気づいていないよう。しかし、いやらしいから我慢していたのだ)。
よく見てみると、やや伸びかけた髭を青々とさせ、苦みばしった中年男の唇と、どうみても美人であろう若い女性OLの、ルージュをひいた朱色の唇が、もつれあって絡みあって、自由自在になっているのをこんな間近で観察できる機会など、そうそうあるものではない。四駅ほど通過したのだが、ずっとディープキスし続けているその尋常ならざる精神力? 体力? も見上げたものだ。
それにしても、いやらしいとしか言いようがないくらい、いやらしいのである。(よくよく考えれば、ふつうは男が「壁ドン」状態になってキスすると思うのだが、そこまで唇の接触が見えたということは、こちらに向かって真横を向いてキスしていたということだ)
なんでよりによって、山手線の車内で。しかも、こんなに混んでいるのに。
誰か、会社のひとに、そんないやらしいキスを見られちゃうかもしれないんですよッ! そう言ってあげたい気持ちもなかったわけではない。
熟年の場合とは、やや様相がことなるけれども、若いカップルの接吻とはわけがちがう。いい年をした大人なのである。社会的な身分もあるし、そこから身についた分別もあろう。あるだろうけれど、しかし、わざわざ混雑した電車内でいやらしく愛をたしかめあう、その気持ちの昂ぶり、やむにやまれぬいやらしい衝動の突出が、猥褻すぎて素晴らしいと思ったのだった。
ところで。この不倫カップルの行為は、やはりジャンル的に分類すると、「野外露出」にあたるのではないだろうか。どうやら、身の丈にあったそれぞれの「野外露出」が存在するようである。 文責:丸眼鏡