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久しぶりに穂積さんから、原稿が届きましたので、掲載します。
【人体の不思議とミュゲの孤独】
二泊三日、某所までの解剖実習へ行ってまいりました。
春に一日日帰り体験をしていたのですが、今回は泊りがけでがっつりと。もちろん本物のご検体、見ごたえ満載で非常に充実した三日間を過ごさせていただきました。
私たちが体験するのは、解剖の現場というより、医学生によって処理されたご検体の筋肉や内臓、脳などをじかに触って確認すること。
マッサージや鍼を行なう上で筋肉がどのくらいの厚さで、どこからどこへついているかなど知っておくために必要なことなのです。
そして病理学など学ぶ上でも内臓、脳にも精通しておかなければなりません。
この体験、ダメな方は本当に耐えられないでしょうね。
一日ホルマリン臭立ち込める室内に缶詰めになって、手袋越しとはいえ生身の筋肉やら内臓やらを触らなければならないのですから・・・でもSM愛好家にこの手のことがダメ、なんて方いるのだろうか?
スポンジのような触感の肺、硬い肝臓を抱えてみたり、こんな小さなものに人間の思考回路が全部つまって私たちの体は動くことができるのか・・・と、言葉ではそれこそ説明しきれないほどの内容でした。
あ、私はホルマリンのにおいも平気でしたし、目にホルマリンがしみないようにしっかりゴーグルつけていたら全く問題ありませんでした。
思ったほどきつくなかったです。不謹慎かもしれませんが、一種のワクワク感さえ感じてしまいました。
この勉強を始めたきっかけは実に単純なものでしたが、実際勉強していると、医療関係の仕事でなくとももう少し学校教育で人体について学ぶ時間があってもよいのではないかしらと感じています。
特にSMプレイなんて下手したら命にかかわるようなこともあるのだから、是非こうした知識は必要なのではなかろうか。
縄の使い方、鞭の使い方に対してもっと考えられると思うのです。
そしてよりよいプレイができれば最高! 少なくとも受ける側からすると絶対安心感が違います。
三日目の小テストはさすがに緊張しました。無事に単位認定されて本当にほっとしています。
さて、その間うちのおねこ様はペットホテルへ預けられていたわけですが・・・東京へ戻ってその足で迎えに行ったところ、
「まったくトイレをしなかったので、今後の安全を保障しかねます。ですので今後申し訳ありませんがミュゲちゃんはお預かりできません」
早い話が、うちのミュゲ「出禁」くらったわけですよ・・・やれやれ。
でもトイレしなかったわりに帰宅すると元気がよい。
万が一病気にでもなっていたりしないかと動物病院に電話をかけ、担当の先生に事情を話したら、
「さすがに三日間もトイレせずに元気でいることは考えられませんから、それ、絶対どこかで漏らしてますよ。ひとまずおうちで様子をみてください」と。
どこをみても至って元気。帰宅して数時間後にはちゃんといつも通り排泄していた。やはり先生がおっしゃるようにどこかで漏らしていたに違いない。
それにしても爪切りに続き、ホテルまで出禁になるとは一体どうしたものやら・・・。
ミュゲの立場を考えると時々胸が熱くなる。
だってろくにコミュニケーションをとれない人間に囲まれて、顔色をうかがいながらごはんがいつとか、どのくらい遊んでもらえるか、まったくわからないのだから。
私はミュゲがうちにきてよかったと思えるように最大限のことをしてあげたいといつも思っているし、たぶん今の私にとって我が子のごとき存在。
寝ても覚めてもミュゲのことが頭から離れることはない。
しかし私たちにはことばの壁、そもそも生き物として同じメスという以外全く違うのである。
持ったことのない我が子に対するのと同じように私はいつもミュゲにうるさいほど話しかけてしまうのだけれど、そのどれくらいをお互いに理解できているのだろうか? 決して広いとは言えないこの部屋と、私との移動範囲がミュゲのすべてなのです。
未だにやるせない気持ちになるのが、ミュゲに見つめられた時。私は残念ながらミュゲと視線を合わせることができないのですから。
ミュゲは未だに時折そのことを気にしている様子で、それを見るたびに胸がいっぱいになります。
小さな体にこの子はきっと壮大な孤独を抱えているに違いない。
ただ、その孤独がミュゲにとって幸せであってくれることを願うばかりです。
ミュゲについてならいくらでも熱く語れる今の私。やはり何者かに依存していないと駄目な性分なのでしょうね。そして時々浮気心も健在。
でも今のところねこはこれ以上増やすつもりはありません。
おそらくミュゲは私が持っていない嫉妬心というものを多分に持ち合わせているようなので。