あるシナリオ作家のおピンクな日々 第3回 【アフレコ】 

ピンク映画のシナリオライターをしている鎌田一利氏による書き下ろしピンク・コラム。


ピンク映画は同時録音ではありません。
撮影現場では、当然ですが、セリフも声に出して喋りますし、喘ぎ声も出します。
ですが、撮影時は録音をしないので、後でセリフや喘ぎ声を再度録音する、
いわゆる「アフレコ」という作業を行います。

アフレコはアフターレコーディングを略した言葉で、簡単に言えば映像を見ながらセリフを録音していくもの。
アニメーションで声優さんが声をあてる作業と同じものです。でもこれがなかなか難しいのです。
撮影時と同じように声を出さなければならないので、慣れないと大変です。
細かく見れば分かるのですが、新人さんなどは口元の動きとセリフが合っていなかったりすることが多くて、
セリフを言いながら演技をするよりも難しい。と言う方もいらっしゃいます。
実際、現場で演技してもビデオと違い、未だにフィルムで撮影をしているピンク映画ですから、
その場でどう自分が映っているのか確認することができません。
役者の方はアフレコの時まで、映像を見る事ができないのです。
アフレコの時になって「こんな風に撮影されていたんだ」と現実を見るわけです。
そのため自分が考えていた映像とは異なるイメージの時もあるわけです。
それでも再度、同じセリフを言わなければいけないので、撮影時とは違う雰囲気の声になるケースもあります。
特にセックスシーンのアフレコは臨場感が必要です。
おまけにベロキス場面の「クチャクチャ」というようなイヤラシイ擬音も同時に録音することもあって、
結構アフレコでセックスを再現するのは大変なことなのです。
ちなみに「クチャクチャ」や「ベチョベチョ」という擬音は指先をマイクに向けて、
ベロベロと舐めながら音を出して録音します。
舐め具合によって音も変わるので、その場面に合うように音を出していきます。
演技にこだわる女優さんの中には、セックス場面での荒い息やアノ感じを倍増させる為に、
「助監督さん、ちょっとお願い」
と一言たのみ、スタジオで助監督さんに後ろからお尻に股間をグリグリと押し付けてもらって、
アフレコ映像の現場を、そこで再現して声をアテている人もいます。
やはり『生(ナマ)』の実感がでれば、それだけ声にもリアリティがでるんですね。
正直、悩ましい声をスタジオで聞いているだけでも興奮しちゃうことがあったりするわけです。
また大ベテランの男優・Dさんは、現場ではあまり口元を動かさずに、
セリフもモゴモゴと聞き取れないくらいに言っているだけでした。
Dさんを初めて起用した監督が、
「アフレコ大丈夫かしら?」
と不安に感じていたそうですが、実際のアフレコではズバリはまって見事だったそうです。
口元の動きに合わせるというよりも、存在感と言うかオーラような気迫の演技で当てたのか、
きっと長年の経験から得た秘訣が、大ベテラン男優さんにはあるのでしょうね。
僕もガヤ。言ってみればその他大勢(笑)でアフレコをやってことありますが、意外と難しかったです。
ガヤとはいえ、自分の姿が写るわけですから、どうしても自分しか見ていないんですね。
だから、他の役者さんとの掛け合いのタイミングがうまく合わなかったりして。苦心しました。
相手の俳優陣の方々は慣れているから、もうサラサラってしゃべって、リズミカルに当てていくのに、
こちらは(僕一人だけかもしれないけど)恐縮して、あの時は緊張しました。
あるベテランの俳優さんは、
「現場とアフレコで二度お芝居できるから楽しい!」
と言って、アフレコを活き活きしながらおこなっていました。
アフレコも慣れれば楽しいのだろうな、と考えつつ、あまり難しいセリフを書いては大変!
と、シナリオ作家としては思ったりしています。



筆者 鎌田一利
高校2年の時、日本映画史に残る大名匠・木下恵介監督が講演会にて私のファンレターを読みあげ「熊本の少年に幸あれ!」と仰ってくださるも、何処で道を違えたか、ピンク映画、B級SFホラー映画(特にメキシコ&スペイン物)、古い邦画(特に大映時代劇)をこよなく愛し、好きが高じて、星野スミレ名義で加藤義一監督「主婦マル秘不倫後ろから出して」(2012 年9月28日公開)というピンク映画でシナリオ作家デビュー。
2013年春には鎌田一利名義で書いた第2作目(加藤義一監督:不倫OL びんかん濡れ白書)が劇場公開!
ピンク映画界の巨匠、池島ゆたか監督より「キネマ怪人」、清水大敬監督から「鎌田金太郎」、加藤義一監督には「しょ~もない映画評論家」という肩書きを頂いた駆け出しのシナリオ作家です。

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