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『ラブレター』
ごきげんよう
タイトルの通りに好きな人にお手紙をして想いを伝えることが恐らくラブレターというのだと思います。
私が初めてラブレターを書いたのは、4歳。
幼稚園で一緒のクラスだった、ムラタユウスケ君にお手紙が書きたいという理由でお習字を習い始めました。
それから、だいたい26年の月日が経っていますが一向に字は上手くなっていない上に、なる気配もありません。
ただ、想いも思いも文字にして人に伝えることは誰よりも長けていると思います。
ああ、そう”たけている“
そんな話をするつもりだった。。。笑
お琴演奏で聞いた曲で『おもいのたけ』という曲があって、それを聞いたのは中学生の時です。
中学校の音楽の授業で何ヶ月間か特別講師としてコバヤシドウセンという当時60歳手前くらいの鶯色の着物が良く似合う小柄で少し気が強そうな女性を暫く”先生“と呼び、かなり厳しいお稽古が続いた日がありました。
彼女はプロの琴の演奏家で、そこら辺のお琴教室の先生とは違った人でした。
彼女の何処が違うのか、まとまった言葉はなかったけど、いつも先生から強さと女の色気とは違う”狂おしい悲しさ“というのをひしひしと感じていました。
ある日、先生の演奏会があるということで聞きに行ったのを今もしっかり覚えていて、中学校の課外授業扱いなのに、夜だし、夜なのに学生服だし、子供ながらに変だよなぁって思っていました。
まあ、ずっと眠くて眠くて大変で苦痛。
ただ、今でもはっきりと聞こえるくらいに覚えているのが『おもいのたけ』その曲だけは
それは、もう鳥肌が立つほどで色恋も知らない中学生の自分が胸の苦しさで涙が止まらなくなるほど。
もちろん、歌詞なんてついてないから意味は無いし、意味がわからないけど、それでも私にはそれが苦しく悲しい恋の話なのだと感じました。
そして、それを弾く先生が美しいというより悲しみを強さで捻じ伏せ、感情を殺し弾いていているけど、何かを忘れられないような顔をして、その何かを見て弾いてるようにしか見えなくて、もう人事とは思えないくらいに演奏している先生を見ていられないのです。
これは先生の秘事なのだ。
先生はそれを弾いてるいるんだと感じました。
それから、それほど日が経たないうちにお琴の授業があったタイミングで、先生のほうから「つまらない感想文なんて書いて、大事な青春の時間を無駄にする必要はありませんよ。何か思ったことがあれば、ここで』と感想文を音楽の先生から提出させられた後に言われて、思わず笑いそうになるのを堪えながら、音楽の先生の息のかかった吹奏楽部の部員達がヤラセの如く、ホニャホニャ何人も小芝居をして大して興味もないくせに、点数稼ぎみたいな質問をしていて反吐が出そうになっている中で「あ、私も手を上げていいんだった」と思い出し、かなり緊張しながら手を上げてみた。
「はい、どうぞ○○さん」と自分の名前を覚えていたことに驚きながら、勇気を振り絞って「”おもいのたけ“ってどう意味ですか?先生の演奏を聞きながら、ずっと気になっていて、ただ悲しいのかなって勝手に思ってしまって、家に帰ってからも考えちゃって」と言ったら、大笑いされてしまったから、私としては、またアホなことを言ってしまったのだと思い恥ずかしくて居た堪れずにいたら、先生が優しく「人を好きで好きで仕方ない気持ちという意味かしらね。わかる?」と言った後直ぐに、先生が遠くを少し見てから「私はこの歳まで独身を貫いて、お琴に全てを費やしてきました。私は師匠が死ぬまで尽くしてきました。結婚すらしてはいませんが、私にとってはこの道の父であり、夫であり、ずっと尊敬する師匠です。私の大恋愛でした。」と清々しく言った先生はその瞬間だけはおばさんとかおばあさんには見えなくて、キラキラと美しく、ただ知ってしまうと凄く切なくなるくらい悲しかったです。
その事をふと思い出したというだけの話です。
この世のラブレターは便箋とペンで出来ていて、文と思いを封筒に入れて出来上がるものだとばかり思っていましたが、どうやら違うようです。
雪村春樹氏の「緊縛は言葉のない恋愛小説のようなもんや」という言葉と同じように、それほど言葉は重要じゃない。
でなければ「月が綺麗ですね」が通じなくなってしまうでしょ?
私は沈んだ太陽に想いを馳せて、月が憎い今日この頃です。