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たまえ講座⑥【荒川也寸志】

 自分のひねり出した文言で気に入っているものに―――人から受ける喝采はあっても、独りしみじみ味わう快哉は、己れの人生の内、極めて稀にしかない―――があります。
 その「快哉」を得る為には、種々工夫をしたまえのヒント提供に、少しは役立つだろうかナ……の思いから「快哉塾」なる連載記事を公表して来た過去があります。

“初・快哉”は、魔羅持つ者としては、今日では平然と使われる「ヘア・ヌード」を狙写出来た時に味わえたのです。
「ダムゼル・ブラボー!!」
 異性の素晴らしさを知った時でもあったのですが、今回はそれを語るものではありません。
 今から二十二年前に、突然、刊行打切りを通告され、それにより執筆意欲を奪ってしまうような結果に至り、誠に面目なく無念に思えてならなかった、気鋭の作家と作品が、若い編集者の熱意と敢意によって、作家の蘇りと長篇小説継続が図られたのが、老人にとっての「快哉」になったのです。
 三和出版「秘性」誌十四号を手にした時、それが味わえたのです。
 意欲再興と、大胆に収載決断を果して下さった「逸見闇彦」氏と編集人に、心から有難うを言わせて頂きます。
 私自身の二度目の「快哉」は得恋で、以後数回得て来ましたが、今回のそれは格別なもので、(もう、これで死んでもいいぞ)と思えたものです。
 どうぞ、ブログ眺めの諸兄弟殿、書籍文化の末席でも参入出来た出版記念物をお買い上げ下さい。いや、手に取ってみたまえ、とすすめます。
 老人の、今の「快哉」獲得願望は、実用新案発明の方に向けられています。
 しかし、申請するにも金がかかるシステムは、ナカナカ行動するにも困難があります。
「誰か、スポンサーになってくれないか!」と叫びたいのですが、「異喜」範疇の事柄ではないので、絶望でしょう。
 夏になって、扇風機を押入れから取り出す事になりました。それは毎年繰り返されることですが、扇風機を見ると「悲劇の発明家」といわれた祖父を思い出すのです。
 扇風機の首振りアイデアを考えつき、特許を得ようとしたのは、徳川幕府により改易大名となった「福島正則」を祖に持つ祖父で、書類作成方法、提出手段が判らなくて、知人に依頼した為、その人物により発明者となれなかったのです。
 その事が新聞に載り、記事は切り取られ、母の許に黄変した紙として残されていました。
 祖父と母の、そうした過去を持つ家族構成の中で育って来ましたから「他人を軽く信用するな」の教訓が桎梏(しっこく)となっています。
 性事を論じ、エロ雑誌作りをして来た老人は、一族にとっては、とんでもない男が出たものだ、との概嘆になっていたので、それだけ「快哉」数は一般の“青人草(あおひとぐさ)”(国民)からは少ないでしょう。
「SM」なら止めておき給えを口にして来た事から、他人から較べて極少でしょう。しかし、悔んでいるのではありません。
「快哉」感には届かないまでも、愉快だろうと想像する事では、「荒川さんに、仕度部屋を提供出来るようにしたいです!」
 と、申し出てくれた人物に『風俗資料館』で出会いましたからネ。
 名刺には“AV監督・縛師”とあって、体つきも頑丈そうな「魁」氏です。
「いい女優の卵を探し出し、谷ナオミのように育て上げ、単発AVだけではなく『異喜のシリーズ』となって続く映像作りとその作家になり給えヨ。大いに期待したい」
 などなどは、喋りまくっておきました。
 本然の美を謳える“大和撫子”を選び出し、古くから世界で言い続けられている「西洋館に住み、志那料理を食べ、日本女性を妻とする」渇仰コトバ、男性願望を具現化する事は愉芽(ゆめ)となるものです。
 スタジオ内で作る映画での日本人の発明は「セッシュ―」「クローズ・アップ」だけと言われています。
 前者は身丈の低い「早川雪舟」が、ハリウッドでの白人俳優と共演する際、踏み台に載って見劣りを隠す手段とした物が、名付けられたのです。後者は、太平洋戦争後、電力不足で一向に撮影が進められずにいた時、演技下手の俳優でも、顔さえ大きく写しておけばストーリーは成り立つ、との発案で生まれた撮影技術です。共に、久しく日本人の「快哉」になっていた事です。
 今や「セッシュー」は不用となり「クローズ・アップ」は、やめとけ技法です。
「クローズ・アップ」は、スポーツ選手たちの醜さや、関西系タレントの阿呆らしさを更に印象付けるものでしかありませんから。
“本然の美”とは、異性が、縁なす黒髪で、腋毛、陰毛も剃り落さず、乳房を隠さず、羞恥みせぬ清楚・挙止端正な姿の中に見出せるのもです。
 そうした“本然の美”を誇れる、賢い異性を「魁」氏が老人に紹介してくれたら、稀なる「快哉」が得られる事になると思います。
 紹介は「妾・二号」の接点を意味しません。
 創造欲かき立てのエネルギー源としたい希望であり、機会になるものです。
 男は、日本の異性を見直し給え。
 小顔、長身、痩せ細り腕脚を美だと思わずに居給え。
 そう絶叫したい程のものが、老人に湧き起こって来ています。
■荒川也寸志
1933年生まれ。編集者、エロストレーター、文筆家。中宮栄の名で奇譚クラブに投稿。その後はSUN&MOON(サン&ムーン)、スペシャリーSM、異喜域、にちげつクラブ、SPROUT(スプロウト)、SMミラージュなどを創刊。荒川・中宮以外にも世田介一、多貫欣など多くのペンネームを使用している。
■氏に連絡を取りたい方は下記までご連絡ください。
三和出版秘性編集部
メール:hisei@sanwa-pub.com
電話:03-5907-7015
住所:豊島区巣鴨4-26-10三和ビル3F