市原綾彦の世界

【底冷え】
画人・市原綾彦氏より絵物語を投稿していただきました。

底冷え
かげまとして
四六時中、女を演じていれば
剃りあげた前髪がかなしい。
たまに来る、女の客を相手にすれば
性の匂いに悪酔いする。
どちらにせよ絶倫で
もう気取ってなどいられないから
獣じみた声を出す。
舞台子として
声高らかに唄い
天女の様に舞い踊るのに
その技を
夜毎の閨でも発揮する。
「釜破損」など笑い話では済まないからと
安入剤を唾液で溶く情けなさに比べたら
たいしたことではないのかもしれない。

底冷え


立てる舞台があるだけいいじゃないか
割り切って、割り切って、どうにかやってきているけど
遅くに来る客を待つ、静かな夜には
言いようのないさびしさに襲われる。
小さな氷が、体の中に少しずつ溜まっていく感覚。
ずいぶんとたくさん溜まってしまった。
はじめのころは
自分の胸をかき抱いていれば
ちゃんと溶けていったのに。
客の息が肌を蒸らす。
体温はあがるのに
氷はよりいっそうの冷たさで心臓を苛み
自分の熱い息でさえ
もう溶かすことは出来ない。



画人・市原綾彦『グレイスホールで踊りましょう』 http://ayahiko.wix.com/ayahiko
本作品の感想や叱咤激励【市原綾彦】氏へのファンレターなど、随時お待ちしております。

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