いちかのつぶやき今日この頃~ 第二回 心

【心】

もう一度だけ、会いたい人っていますか?

別れたことを悔やんだことってありますか?

時間を巻き戻して、もう一度だけ抱きしめたられたいと思ったことがありますか?

私は、あります。

でも、現実には不可能で

夢に出て来た時にすら逃してしまって、夢から覚めた朝に涙が止まらないってこともあるんです。

会いたい

でも

もう会えない。

夢の中でもいいから、夢の中では抱きしめられるのではなく、抱きしめたいと願うけど現実の冷たさにやるせない怒りしか残りません。

しかし、不思議なことがあって

一瞬だけ会える時があるんです。

縛られている時

縛られる前に抱きしめられた時に感じるんです。

導入部分の抱き竦められた瞬間に相手は荊子さんで立派なおっぱいもあって、良い香りがして、艶やかな肌の綺麗な女性だというのに、自分が好きだったその人が、瞳を閉じると居るんです。

目眩く、凄い速さに感じる程にワシワシと縛られ、そして触れられるその中で好きだったその人の声が聞こえてくるのです。

会場も照明も、観客も荊子さんも見えなくなって、自分が縛られていることも忘れて、自分を見失っていくその中ではっきりと、好きだったその人との幸せだった時間が蘇ってくるんです。

ずっとその中に私は居たい。

でも、いつも良いところでバーンッと現実に呼び戻されるのです。

さっきまで熱かった体は縄から解き放たれて、どんどん冷たくなっていく。

意識も朦朧として、頭が混乱する中で荊子さんに支えられて客席に向かってお辞儀をする。

緞帳が閉まって、荊子さんが毎回一言

荊子さんが優しい一言を言ってくれるんです。

それから、人気のない舞台袖で私を抱きしめてくれて

それで”夢だったけど、私はひとりじゃない“とまた熱が込み上げて、涙が溢れるのです。

それで、抱きしめてもらってたのに必死に荊子さんにしがみつくんです。

アハハハと笑い「いつまでも泣かない!もう、終わりましたよ」って嬉しそうに荊子さんがしてる気がして、さみしいはずなのに全然さみしくないんです。

荊子さんはそういう人で

荊子さんはそういう凄いことが出来る人で

荊子さんは私にとってそういう人です。

だから、縛られたいんです。

だから、私は荊子さんに縛られたいんです。

良い時も悪い時も私はまるっと全て、彼女に縛られたいんです。

何故ならば、彼女が生み出すものの中に私がちゃんと居て、そして迷ってあの世に行ってしまいそうな弱い私を釣り上げてくれるから。

だから、私は縛られる。

そう。

だから、たくさん泣くんじゃなくて

頑張って笑顔なフリをする自分を捨てて

無邪気に泣けるんです。

ある意味、ちゃんと泣かされてるのです。

彼女の前では頑張らなくていいんです。

私は私でいいんです。

彼女がショーの前に必ず言うんです。

「ふつうで」って緊張しながら、ソワソワと100円ショップで買った真っ赤なデジタル時計を見て、あっさり低いトーンでそれを言って、シャネルのガブリエルが綺麗に塗られたその紅い彼女の口元が微笑む。

大勢の人が見る中で

たくさんの人が居る中で

私のことなんて知らない人達の前で

私は彼女に縛られる。

緞帳が少しずつ開いて

暗かったステージに光が差す

照明にパーンっと照らされて

そして、私は縛られる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

このサイトは成人向けの情報を含みますので、18歳未満の方の閲覧を固くお断りいたします。

あなたは18歳以上ですか?