ふつうの女の子にお漏らし実験させてみた 優子篇②

浅草橋は新宿歌舞伎町に引けを取らないほど、人通りが激しかった。
「ちょっとそこのガード下で、チャレンジしてもいい?」
優子はJRの改札口を出てすぐの、高架下へと私を引っ張っていった。黄色いような黄土色っぽいような壁には、やはり黒スプレーのイタズラ描きがあった。優子はイタズラ描きに身体を向けると、私の右腕をつかんだまま大きく息を吸い込んだ。息を詰めて搾り出そうとしているのが、右腕から伝わってきた。私もいつしか優子と同じように息を詰めていた。深呼吸と息詰めを何度かくり返していると、突然右腕が軽くなった。
「……なんでかなぁ……、どうして出ないのかなぁ……、したいの出ないって、どうしてよぉ……」
優子がその場で、じれた子どものように手足をぶらぶらさせて地団駄を踏んでいる。
「しゃがんだら出るんじゃない?」
「それはダメだよ。だって立ちションがしたいんだよ、あたしは。それにここでしゃがんだりしたら、モロにヤンキーって感じになっちゃう」
私の提案は速攻で却下された。
私達はそのまま浅草橋で買い物をしてから、優子の住む阿佐ヶ谷へと向かうことにした。
「最悪、自分の部屋で立ちションでもいい?」
「うん、いいよ」
いい加減に返事をしながら、私は腕時計を見た。もうじき七時になる。優子と会ってから六時間経過した。その間、私は一回トイレに行った。けれど優子は一回も行っていない。これだけ出ないということは、よほど潜在意識がストップをかけているのだろう。
「西友で買い出しがしたい」
優子の希望により、阿佐ヶ谷駅のすぐそばの西友に二人で入った。
三階の日用品フロアで柔軟剤のダウニーを買い物カゴに入れると、優子が私の背中を押した。
「見てみて、ここでコレ買ったんだ」
優子が私を連れてきたのは、紙おむつコーナーだった。
「アテント、夜1枚安心パッド、仰向け、横向き寝でも、モレを防ぐ」
優子は商品名を読み上げた。
「ちょっとここでもチャレンジしてみるね。今度は屋内だから、もしかしたら出せるかも」
またも私の腕をつかむと、優子は深呼吸してから息を詰めた。積み上げられた紙おむつが並んだ棚の前で、私達はそのまましばらくじっとしていた。
「……ダメだぁ……」
肩を落とす優子に、もういいから、と私はいった。出ないものは出ないのだから、しょうがない。今回のことで、普通の女の子がおむつをして放尿することが、どれだけむずかしいことなのか、身に沁みてよくわかった。
ところが、二階に下りてお菓子を選んでいる時だった。
おせんべいが並んでいる棚の最下段の『ばかうけ』を取ろうとして、隣にいた優子はその場にしゃがんだ。
「あっ────────」
性感帯をいじられた時に思わず出てしまうような声が、優子から上がった。今、出たな、とすぐにピンと来た。すかさず優子に視線を走らせると、眉根にシワが寄り、口は『じぇ』といっているかのように中途半端な感じで開き、ぼんやりとした虚ろな目をして固まっている。時間にして二十秒ほど経ってから、優子は私を見上げた。
「今、してたよね?」
私が訊くと、優子はしゃがんだままコクンと首を縦に振った。
「出ちゃった感じ?」
優子はもう一度、首を振った。
「立てる?」
私が手を出すと、優子は大丈夫、といいながら自分一人で立ち上がった。
「勢いはないくせに、ずっと止まらないから焦っちゃった」
恥ずかしそうに優子が私の耳元で囁いた。
「我慢しすぎると、そんな感じの出具合になることあるよね」
「うんうん、そんな感じ」
紙おむつに漏らしたばかりの優子のすぐ脇を、何も知らない子ども連れのお母さんや腰の曲がったおばあちゃんが通っていく。
「もう、外してきてもいいかな?」
「そのままだと、気持ち悪い?」
「うーん、気持ち悪いっていうか、なんか重たい感じ」
二人してトイレに行くと、中は無人だった。個室に入った優子と、個室の外にいる私とで、おおっぴらに会話することができた。
「おもらしした感想は?」
「やっちゃったなーって感じ」
「おもらしは初めて?」
「うん。初体験」
「おしっこが出てる間って、何を考えてた?」
「何かを考える余裕なんて全然なかったよ。自分のお尻が自分のおしっこでどんどん濡れていくのを『え?』『ええっ?』みたいに思ってた」
「立ちションできなかったけど、再チャレンジする気はある?」
「立ちションは、練習を積んでからじゃないとムリそうだなぁ」
「練習って?」
「なんかね、出そうと思ってもダメだって、わかったんだよね。もっと自分のネジを緩める練習が必要だなぁ」
「自分のネジって、何?」
「アソコの筋肉だけじゃなくて、気持ちとか気分とか」
そう答えながら、優子は個室から出てきた。
「エヴァの碇シンジじゃないけど『ここでしてもいいんだ』みたいなテンションに自分を持っていける練習を積んだら、まずはしゃがんで屋外、それができてから屋外立ちション、かな」
練習試合後の高校球児のようなサッパリした笑顔で、優子は今後の抱負を語ってくれた。
「やっぱり屋外はキツイ?」
「うん。人間の目より、太陽とか空とか外の空気とかの方が、いけないことをしてるって感じがして、出せないっていうか、自分のネジを緩められなくなる」
それは、私が海の中でオシッコできない理由と同じだった。
「今日のことは、彼氏に報告する?」
「あたしはヘンタイになれない、つまらないオンナでした、って報告する」
優子は交際歴二年目の彼氏に『もし自分が、おしめをして立ちションすることにハマッてしまったら、その時はヘンタイ女として大切に扱ってね』と事前にいってきたそうだ。
「ヘンタイ道って、険しいんだなぁ」
妙なところで感心する優子に、私は心から感心した。 【おわり】

テキスト 内田かおる
※普通の女の子を知るべく、10歳から34歳までの女性をメインに対面取材を行っている女性ライター。
【関連本】甘えんぼう系SM (おもらし倶楽部シリーズ60)
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