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たまえ講座⑦【荒川也寸志】

 常々、面白い話をしたい、とは思うのですがネ……オモシロイは、人それぞれ感じ方が違う事なので、これがいい、とは決めかねます。
荒川也寸志の野郎は、責め具作りを楽しんでるだけの奴だ、と思われても、面白い見方をしてくれるもんだナ……と笑っていられますし、麻縄だけを手に持ち、異性の手首を後ろに揃えさせて縛りを始める“縛り屋” “縄師”の手段・技法を見ると「面白い奴」との目を、老人は向けます。
地上生物で、言葉を使い、歌を口ずさみ、踊り舞う事が出来るのは人間だけなのですから、三大特色を思う存分に発揮したまえ、と歓迎します。
そう、動く生き物を、鎖、ロープ、紐などでつなぎ留めたり、縛る工夫が出来るのは、人間様にしかやれない特殊性でしょう。
本当は、政治の世界や宗教界の事まで、面白がっていて、アレコレ記述・表現などしたいのですが、弾圧粛清されるがオチの別界の事であり、出版業界に多大なる迷惑を及ぼす事となりますから、じっと我慢しておきます。
老人は、腹立つことも、「面白いや」と思う生き方を続けて来ました。
「SM」の世界の事は、成人してから「本当かい? オモシレイや」と注目した事で、反面強い馬鹿馬鹿しさを覚える人間の生き様です。
異性を、縄で縛ってアレコレしてみる努力は、ロス・エネルギー(体力浪費)でしかありません。その事を思って、是非々々異性互愛の、賢明な生き方をしたまえ、となる話です。
ところで、「たまえ講座」も、他人頼み構成展開をさせて貰っており、何やら、尻取り記述のように感じて来て、恥入る気分を強めています。
とは言っても、依然、文字や話し言葉にこだわり、独断や偏見が老人の個性なんだと、「たまえ」話題を採り上げるのには、何卒御寛恕願わしく思います。
昭和老人が、異性の存在に感謝し、一番喜ばしいのは、乳房を輝かしく身に備えていることです。
乳房には、心底強い憧れを抱くのですが、それを人前では素直に吐露出来ず、言い淀み悩み、避ける、おかしさから逃れきれません。
敬愛さえ思う個所部位なのですが、表現につくづく困ったものだ、と思い考え込んでしまうのです。
「おっぱい」表現に躊躇なく、その方面での大家の如く、刊行物などで重宝される人には、作家・伴田良輔氏がおられますが、老人にすると「おっぱい」は稚語めいて記述物の中では使い切れません。
医学界の「にゅうぼう」の表示・明言ぶりは可哀そうだと思ってしまい、老人は好もしい異性の愛くるしい胸のふくらみに対しては、造語ですが「魅稜(みりょう)」が絶対いいと思っているのです。
男性が魅了されるもの、魅せられ慕わしく思い続ける、女らしさの象徴として最適な言い回しだと思いますが……独りよがりでしょう。
「おちち」「パイパイ」「ちぶさ」「ボイーン」「バスト」「ブレスト」「胸丘」等々、人様々に言い表わしますが、男でも女でも、一様に「あそこ」と口にする箇所より「おっぱい」絶賛する異喜仲間を、良い奴だ風に見てしまうのです。
男は、一度でも女性を前にして、胸がデカすぎだァとか、貧乳ペッタンコだァと、批評批判したら駄目だと、心得ておきたまえ。見る目付きをしても、ヌードになったり、セクシーに振る舞っては呉れなくなるものだぜ、との忠告もしておきましょう。
「魅稜」は、まず、自分のためにオンナにあるものだと思い給え、が、今回の“
談譚”なのです。
老人は、かつて「これが仕事!」とした事で、多くの異性モデルを、その時々のお相手として来ましたから、観賞は他人より沢山して来た事になります。凹んだ箇所や窪んだ部分を、覗き込んだり、さわる事での干渉は、かつての「奇ク」のSMカメラハンターのT氏や、近年の責め師の諸氏如くはして来ていません。常に、プラトニックラブの相手如くの一時的パートナーとしてでした。
換言すると、「縄もてる女千人斬り」が目標ではなかったのです。正に裸の付合いが可能になっているスタジオの中に居る事が、仕事の面白さであり、目の保養でもあり、生きている歓喜になっていましたから、写真のコレクターでもないのです。
納税もし、選挙に行きの義務と権利を果しての上での老人ばなしですから、刺戟・煽情味は無いも同然の、アンチSMばなしの終始となります。
それを我慢し、面白がってブログ見聞を続けてくれる後生人たちには、一種の励しを送りたいと思っています。
ホモだ、ニューハーフだの種族に関心を持たず、純粋な異性愛者として、面白い世の中に立ちたまえ、となりますが、如何。
老人の「魅稜」憑かれを実証する映像資料は、現今のデジタルカメラ狙写には皆無で、モノクロフィルム物を取り出し、現像しなければならないのですが、その暗室もなく作業し仕様もならぬ状態です。
こうした時に、白黒写真でも色彩を見る事の出来る観賞家及び現像技能者が名乗り出てくれたら、オモシロく思い、ネガを預けて仕上りを楽しむことも出来るでしょうに……。
彼の「風俗資料館」に暗室が存在したら、老人は勇んで出向き、魔羅持つ人間を奮い立たせる事に役立つであろう事をするでしょうに……今は面目なさで、しぼんでいます。
子供は、親を選んで産まれて来る事は出来ません。そうした中での面白さを得る事は、トライ・アンド・エラーの体験で、発見する事しかないのです。
既存「SM」のマニアにならず、求知心の強い「探索マニア」になれば、退屈も諦めもせずに過せます。
パソコンだ、スマートホンだ、で指使いだけが達者になった現世での老若男女は、インターネット通信だけが楽しみとしている傾向にありますが、老人は不快でたまりません。
フェイス トゥー フェイスの付合いを無上のものと考える老人は、拡大が可能であっても通常微少な文字で読み取る電子機器に惚れ込んでいる人士の将来を思うと、足は弱まり、近眼猫背になって、よろめき歩く老害的動物になりさがるだろうと面白がる人間になりつつあります。
夫婦の性交中にも拘わらず携帯を持ち、睦み合い忘我する事も出来ずにいるカップルが激増している現代では、少子化を憂う国家すら、オカシク、オモシロイ事です。全てが馬鹿げていますからネ。
どうか、生殖機能を健全に保有している後生人たち、善きセックスを享楽したまえ。老人の言う、示す「魅稜」の事の、欲しがる、与えるの関係を、コソコソ・セコセコせずに築き上げ給え!
「魅稜」二つには、「愛」が貯まっている、片や「情」に満ちている、との思いを男女ともに持ち給え。さすれば清々しく、晴れやかに爽快に人生がすごせるようになって行くでしょう。子供を作り、産ませて育てる前に、男はパートナーの乳首を吸い、円やかに偏形なく舌と唇で整形しておき給え。昔の表現にある「乳くり合う」を、照れず拒まず実行するのです。それをベビーちゃんは嬉しそうに縋りついて吸い続けます。女性は、我が子を、「母乳嫌い」にさせぬ様に、したまえ。

「そもさん」

■荒川也寸志
1933年生まれ。編集者、エロストレーター、文筆家。中宮栄の名で奇譚クラブに投稿。その後はSUN&MOON(サン&ムーン)、スペシャリーSM、異喜域、にちげつクラブ、SPROUT(スプロウト)、SMミラージュなどを創刊。荒川・中宮以外にも世田介一、多貫欣など多くのペンネームを使用している。
■氏に連絡を取りたい方は下記までご連絡ください。
三和出版秘性編集部
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