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『女教師・股縄相撲』(左母次郎)【第1話】

●第1話


「神岡君、ちょっと話があるんだが。校長室へ来てくれるかな」

教頭に声をかけられて、歩美は帰り支度の手を止めた。臨時の教員として採用され、この中学校にやってきて3ヶ月。まだまだ慣れないことも多く、何かミスでもあったのだろうかとびくびくもので校長室へ向かった。校長はでっぷり太った置物の狸を思わせる人物で、痩せたカマキリのような教頭とは好対照だった。

「きみ、相撲部の顧問になってくれないか」

校長はいきなり切り出した。

「相撲部……ですか?」

歩美はスポーツが苦手で、相撲のことなど何も知らない。校長と教頭にそう告げたが、それでも構わないという返事が返って来た。

「君は部員達が練習に打ち込めるようにサポートしてくれればいいのだ。うちの相撲部が強いのは知っているね?」

そう言えば……この地方ではスポーツが盛んだが、どの学校でも特に力を入れているのが相撲だ。年に一度の学生相撲大会はオリンピックもかくやというほどの盛り上がりを見せる。この学校はそれに何度も優勝している強豪校なのだ。

「ええ、でも……」

「頼むよ。君みたいな優しそうなお姉さんがいれば、部員達も練習に力が入ろうってもんだ」

「はあ……」

地元出身ではない歩美にとっては、相撲と聞いても暑苦しそうなイメージがあるばかりで気が進まなかった。が、なかば強引に承諾させられてしまった。

「では早速、部室に行って練習風景を見てもらおうかな」

教頭と校長は歩美を促して校長室を後にした。グラウンドに出ると、さまざまなスポーツ部員達が練習に汗を流していた。

「あれが相撲部の部室だ」

指差した先には木造のがっしりした小屋が建っていた。廻し姿の生徒が数人、竹箒で掃除をしているのが見えた。部室に向かって歩いて行く途中、サッカーのボールが歩美の傍らをかすめて転がって行った。サッカー部員が一人、慌てた様子で走って行き、部室の開け放たれた扉の前でボールに追いついた。サッカー部員はボールを拾い上げると明らかに下級生と見える相撲部員にぺこりと頭を下げ、失礼しました!と大声で言った。歩美は呆気にとられてその様子を見ていた。

「まあ、相撲部員はスターだからね」

教頭が取り繕うように言うが、歩美は相撲部の顧問を承諾したことに不安を感じ始めていた。

相撲部の部室の中には土俵のある稽古部屋と、畳を敷いた休憩室、ロッカールームがあった。部員達はランニングに行っているそうで、部室に残っているのはさっき見かけた廻し姿の下級生だけだった。

「部員達が戻って来たら紹介するから待っていたまえ。なに、みんな良い子たちだから心配はいらないよ。部長は、何を隠そう、私の息子なんだよ」

校長は目を細めてにんまり笑った。やがてジャージ姿の部員達が息を切らせながら帰って来た。中学生とは言え、歩美は自分より大柄な少年達に気圧されてしまった。部長の剛志は校長にそっくりで、一目見て見分けがついた。

部員達が休憩室でジャージから廻しに着替えている間、歩美はひとりぶらぶらと部室内を歩き回った。土俵というものを間近で見るのは初めてで、こうなっているのか、などと思いながらその中へ入り込んだ。箒で掃き清められた土俵に靴の跡が残った。

「神岡君!」

校長の鋭い声にハッとした。

「君は何と言うことを……」

「えっ?」

「土俵から出たまえ!」

部員達がぞろぞろと集まって来る。全員が歩美を睨みつけていた。慌てて土俵から飛び出したが、何が悪かったのかわからない。

「女のくせに、神聖な土俵に入るとは何事だ!」

女性は土俵に入ってはいけなかったのか?そんな馬鹿な、とは思ったが言い返す勇気はない。

「あの、すみません、知らなくて……」

しどろもどろで謝る歩美だが、校長の怒りはおさまらない。

「知らなかったで済む問題ではない。君は相撲を冒涜したのだ」

いつの間にか部員達にぐるりと取り囲まれていた。歩美は恐怖を感じた。

「剛志、この落とし前、どうつけさせる?」

校長が剛志に問いかける。威喝感のある声が返ってきた。

「土下座をしてもらおう」

「そうだ、土下座だ」

部員達が口々に言う。

「神岡君、土下座だ。土下座して心の底から反省するのだ」

校長がまくしたてる。教頭はそのとおりとばかり頷いた。やはりこの相撲部はおかしい。いや、学校自体が異常なのではないか。歩美はとにかく部員達の怒りを鎮めなければ、と正座した。剛志の方を向いて頭を下げる。

「すみませんでし……」

最後まで言わせず、剛志が一喝した。

「脱げ!」

何を言われたのかわからなかった。裸足になれということかと思ったが、部員達の浮かべている笑みで違うと気づいた。

「服を脱いで裸になれ。土下座と言ったら裸に決まってるだろう!」

「そんな……」

無意識に胸元を押さえる。

「神岡君、言われたとおりにしたまえ。相撲部に睨まれたら大変だぞ」

教頭が口をはさむ。

「許してください。そんなこと出来ません」

「脱げって言ってるんだ!」

剛志がすごい剣幕で怒鳴りつけた。歩美はすっかり怖じ気づいてしまった。

「裸になって土下座すれば許してくれますか?」

蚊の鳴くような声でようやく言った。それしかないような気になっていた。逆らえば無理矢理裸にされるのではないか。

「あのう……戸を閉めてください」

部室のグラウンド側の戸が大きく開け放たれていた。他のスポーツ部の生徒から丸見えだ。

「言うことを聞きますから、戸を……」

返事はなかった。部員達は下卑た笑みを浮かべたまま歩美を見つめている。涙がこぼれた。こんな所で裸になるなんて……

よろよろと立ち上がり、ブラウスのボタンを外し始めた。手が震える。突然、大きな掌が歩美の頬をはたいた。よろめいて尻餅をつく。

「もたもたすんな!」

相撲部1

抵抗する気は完全に失せていた。暴力に対する怒りよりも恐怖が体を支配していた。嗚咽しながらブラウスを、スカートを脱いでいく。全裸になると、取り囲む部員達の視線がからだに刺さってきた。正座して頭を下げる。

「すみませんでした」

震える声でやっと言った。

「お前が新しい顧問か。名前は」

剛志の声が頭上から降ってきた。

「神岡……」

「声が小さい!」

いきなり後頭部を踏みつけられた。顔が砂に埋まる。口の中に入った砂もそもまま、叫ぶように言った。

「神岡歩美です!」

「部員全員、一人一人に謝れ」

歩美は部員それぞれの方を向いて土下座した。

「反省しているな?」

「はい。反省しています」

「今度から気をつけろよ」

「はい。気をつけます」

剛志は手を打ち鳴らして号令をかけた。

「よし、みんな、練習はじめるぞ!」

「はい!」

部員達は猛然と練習を開始した。ぶつかりあう肉の音が響く。歩美は全裸のまま、稽古部屋の隅に正座させられた。校長と教頭が寄ってきて言った。

「神岡君、良かったじゃないか。ちょっとアクシデントはあったが、結果的に気にってもらえたようで」

「うむ、君の前任者は反抗的だったからね。言うことを聞かせるのに骨を折ったもんだ。君はものわかりがよくて助かるよ」

「帰らせてください」

歩美はうつむいたまま、涙まじりに言った。

「顧問なんてもう嫌です。辞めます。帰らせてください」

校長と教頭は顔を見合わせた。

「そうはいかないよ。君は相撲部員達のものになったんだから」

何を言っているのかわからなかった。

「君の役目は部員達が練習に打ち込めるようにサポートすることだ。若い部員達が性欲で気を散らしたりしないようにね。今日から君は彼らのペットってことさ」

続く


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